至福の時間SFに出会う
時間SFモノということで気になっていた、近刊の「時砂の王」を読んでみました。
- 作者: 小川一水
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/10
- メディア: 文庫
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イヤ〜たまりませんでした。設定とストーリーテリングの巧みさにまず感服。個体としてはモノ凄い能力を持つメッセンジャーがなぜ完璧に人類を守る時間軍たり得ないかなど、分かりやすく登場人物に語らせているので戸惑うことがありませんでした。時間を遡行する敵との戦いでは22世紀や1943年などの社会描写が出てくるのですが、特に1943年はゾクゾクしましたね。ここいらへんだけでも、外伝みたいな形で読ませていただきたいものです。物語として重要な(結果的に人類にとって重要過ぎる)彌与の人間的な成長も丁寧に記述されていて、感情移入がし易かったです。ハードSFの要素十分なジュブナイルとして、中高生の読者をも掴みそうですね。
ただ少々気になったのは、時間干渉を並行宇宙の改変として捉えた物語にしては、因果律がずいぶんキッチリし過ぎているんじゃないかと感じた部分です。言ってしまえば、タイムパラドックス。そしてラストがああなるならもっと早く解決してたのではないかという事。でも並行宇宙の中では一見因果律に見えてそうではない状況もあり得る、と考えれば矛盾はない。ま、そんな感じで頭の中で補完して、ひとまず折り合いを付けております。